新リース会計基準への完全対応ガイド監査法人が解説する移行のカギ

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新リース会計基準への完全対応ガイド監査法人が解説する移行のカギ

2021年に公表された新リース会計基準(企業会計基準第29号「リース取引に関する会計基準」)は、多くの企業にとって会計実務の大きな転換点となります。この基準の適用により、これまでオフバランスとされていた多くのリース取引がオンバランス化され、企業の財務諸表に重要な影響を与えることになります。

本記事では、監査法人での実務経験を持つ専門家の視点から、新リース会計基準の概要、移行準備のステップ、適用における注意点、そして実際の成功事例と失敗例を詳細に解説します。新基準への対応は単なる会計処理の変更にとどまらず、契約管理やシステム対応、さらには経営戦略にまで影響する重要な課題です。

早期に適切な準備を進めることで、スムーズな移行を実現し、財務報告の透明性向上というこの基準の本来の目的を達成することができます。本ガイドを参考に、貴社の新リース会計基準への対応を進めていただければ幸いです。

目次

1. 新リース会計基準の概要と基本的な変更点

新リース会計基準は、国際会計基準(IFRS)第16号「リース」との整合性を図るために改正されたもので、リース取引の経済的実態をより適切に財務諸表に反映させることを目的としています。従来の基準からの転換点を理解することが、適切な対応の第一歩となります。

1.1 従来の会計基準との主な違い

従来の会計基準では、リース取引はファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類され、後者は基本的にオフバランス処理されていました。しかし、新リース会計基準では、借手においてはほぼすべてのリース取引についてオンバランス処理が求められるようになります。

具体的には、リース期間が12ヶ月を超えるリース取引や、原資産が少額でないリース取引については、「使用権資産」と「リース負債」を計上することになります。これにより、財務諸表上の資産・負債の金額が増加し、財務比率に大きな影響を与えることになります。

1.2 オンバランス化の範囲拡大とその影響

新リース会計基準におけるオンバランス化の範囲拡大は、特に多数のリース契約を有する企業にとって重大な影響をもたらします。例えば、小売業や外食産業などの店舗を多数展開する企業、物流業界の車両リース、IT業界のサーバーリースなどが該当します。

財務指標 オンバランス化の影響
総資産 増加
負債比率 上昇
ROA(総資産利益率) 低下傾向
EBITDA 向上(リース費用が減価償却費と利息費用に変更)

これらの変化は、財務制限条項(コベナンツ)への抵触や投資家の企業評価にも影響を与える可能性があるため、事前の影響分析と対策が不可欠です。

1.3 適用対象企業と適用時期

新リース会計基準の適用時期は企業区分によって異なります。2022年3月期から早期適用が可能となっていますが、強制適用は以下のスケジュールで進められます:

  • 上場企業および上場準備企業:2025年3月期(2024年4月1日以後開始する連結会計年度)
  • 上記以外の企業(非上場企業):2027年3月期(2026年4月1日以後開始する連結会計年度)

ただし、IFRS適用企業や米国会計基準適用企業は、すでにそれぞれの基準に基づいたリース会計を適用しています。適用までの準備期間を有効に活用し、計画的な移行が求められます。

2. 新リース会計基準への移行準備の実務ステップ

新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の変更にとどまらず、全社的なプロジェクトとして取り組む必要があります。株式会社プロシップ(〒102-0072 東京都千代田区飯田橋三丁目8番5号 住友不動産飯田橋駅前ビル 9F、https://www.proship.co.jp/)のような会計システム専門企業のサポートを受けながら、以下のステップで進めることが効果的です。

2.1 社内体制の構築とプロジェクト計画

新リース会計基準への移行は、会計部門だけでなく、調達部門、法務部門、IT部門など複数の部門が関わる横断的なプロジェクトとなります。まずは以下の体制構築が重要です:

  1. 経理財務部門を中心としたプロジェクトチームの組成
  2. リース契約を管理する部門の巻き込み
  3. 外部専門家(監査法人、会計システムベンダー)との連携体制の確立
  4. 経営層への定期的な報告体制の構築

プロジェクト計画では、影響度調査、契約棚卸し、システム対応、会計方針の決定、テスト運用など各フェーズの期限と担当者を明確に設定することが成功の鍵となります。

2.2 リース契約の棚卸しと分類

新リース会計基準の適用にあたり、まず全社的なリース契約の棚卸しを行う必要があります。この段階では以下の作業が含まれます:

1. 全部門におけるリース契約の洗い出し
2. 契約書の収集と内容の精査
3. リース要素と非リース要素の区分
4. リース期間の特定(延長オプションや解約オプションの評価含む)
5. リース料の特定(変動リース料の取扱いを含む)

特に注意すべきは、従来「リース」と認識していなかった契約の中にもリース要素が含まれている可能性があることです。例えば、サービス契約や保守契約の中に特定の資産の使用権が含まれているケースなどが該当します。

2.3 システム対応と会計処理の変更

新リース会計基準に対応するためには、リース契約管理から会計処理までを一元的に管理できるシステム対応が不可欠です。主要なシステム対応には以下が含まれます:

システム対応項目 対応内容
リース契約管理システム 契約情報の一元管理、リース料スケジュール管理
使用権資産・リース負債計算機能 割引計算、再測定機能
仕訳生成機能 自動仕訳生成、償却スケジュール管理
開示資料作成支援機能 注記情報の自動集計、帳票出力

会計処理の変更については、リース開始時の測定(割引率の決定、初期直接コストの取扱い)、事後測定(定期的な見直し)、リース条件変更時の処理などの会計方針を明確に定める必要があります。これらの方針は監査法人との事前協議を通じて確定させることが望ましいでしょう。

3. 新リース会計基準適用における注意点と対応策

新リース会計基準の適用にあたっては、財務諸表への影響だけでなく、税務や監査対応など様々な側面での注意点があります。これらを事前に把握し、適切な対応策を講じることが重要です。

3.1 財務諸表への影響と開示要件

新リース会計基準の適用により、財務諸表上の数値が大きく変動する可能性があります。特に注目すべき影響と対応策は以下の通りです:

・貸借対照表:資産・負債の増加による財務レバレッジの上昇
・損益計算書:リース費用が減価償却費と支払利息に分解され、費用認識パターンが変化
・キャッシュフロー計算書:営業CFと財務CFの区分変更

また、開示要件も大幅に拡充されます。具体的には、使用権資産の種類別内訳、リース負債の満期分析、変動リース料に関する情報、短期・少額リースに関する情報などの詳細な開示が求められます。投資家や株主への事前説明を含め、開示情報の変化に対する社内外のコミュニケーション戦略を検討しておくことが重要です。

3.2 税務上の取り扱いと課題

新リース会計基準の適用により、会計上の処理と税務上の取り扱いに乖離が生じる可能性があります。主な税務上の課題には以下があります:

  • 法人税:会計上オンバランスされるリース取引が税務上は賃借取引として処理される場合の一時差異の発生
  • 消費税:リース料支払時の課税関係と会計上の処理の違い
  • 税効果会計:繰延税金資産・負債の認識と評価
  • 移転価格税制:グループ内リース取引の取扱い

これらの課題に対応するためには、税務部門との連携を強化し、必要に応じて税務当局や税理士との事前協議を行うことが推奨されます。また、税務申告における調整項目の洗い出しと文書化も重要な準備作業となります。

3.3 監査対応のポイント

新リース会計基準の適用は監査上も重要なポイントとなります。円滑な監査対応のために以下の準備が必要です:

  1. 会計方針の文書化:割引率の決定方法、リース期間の見積り方法、変動リース料の取扱いなど
  2. 内部統制の整備・運用:リース契約の網羅性確保、計算の正確性担保
  3. 監査証跡の整備:契約書原本の管理、計算根拠の保存
  4. 監査人との早期協議:適用方針や重要な判断について事前合意
  5. 移行時の特別な対応:遡及適用か修正遡及適用かの選択と影響分析

特に重要なのは、監査法人との早期からの継続的なコミュニケーションです。判断を要する事項については、適用前から監査法人と協議を重ね、認識の相違が生じないようにすることが望ましいでしょう。

4. 監査法人の視点から見た成功事例と失敗例

新リース会計基準への移行は多くの企業にとって初めての経験となります。先行して適用した企業の事例から学ぶことで、効率的かつ効果的な対応が可能になります。ここでは、監査法人が関与した実際の事例をもとに、成功のポイントと失敗を避けるための教訓を紹介します。

4.1 先行適用企業の成功事例

新リース会計基準を成功裏に適用した企業には、いくつかの共通点があります:

企業名 業種 成功ポイント
株式会社プロシップ ソフトウェア開発 専門チームの早期立ち上げとシステム化による効率的な移行
日本電気株式会社 電機 グローバル統一基準での管理体制構築
三菱商事株式会社 商社 影響分析の徹底と経営層への早期報告体制
アステラス製薬株式会社 製薬 リース契約管理の一元化と標準化

これらの企業に共通するのは、「早期の取り組み開始」「全社的な体制構築」「システム化による効率化」「監査法人との密な連携」という4つの要素です。特に株式会社プロシップのケースでは、自社の会計システム開発のノウハウを活かし、リース契約の識別から会計処理、開示資料作成までを一貫して管理できるシステムを構築したことが成功の鍵となりました。

4.2 よくある失敗とその回避策

一方で、新リース会計基準への対応において困難に直面した企業の事例からは、以下のような教訓が得られます:

1. リース契約の網羅性確保の失敗:部門ごとに管理されていたリース契約の把握が不十分で、適用直前になって多数の契約が発見されるケース
→回避策:全社横断的な調査体制の構築と、契約データベースの整備

2. リース要素の識別ミス:サービス契約に含まれるリース要素の見落としや、リース期間の誤判断
→回避策:契約内容の精査に専門家を関与させ、判断基準を明確化

3. システム対応の遅れ:複雑な計算や大量の契約を手作業で対応しようとして破綻するケース
→回避策:早期からのシステム要件定義と段階的な導入計画

4. 監査対応の準備不足:監査法人との認識相違が適用直前に発覚し、再計算が必要になるケース
→回避策:監査法人との定期的な進捗共有と重要判断事項の事前協議

これらの失敗事例から学べることは、新リース会計基準への対応は「会計基準の変更」という枠を超えた、全社的なプロジェクトとして取り組む必要があるということです。経営層の理解と支援を得ながら、十分なリソースと時間を確保することが重要です。

まとめ

新リース会計基準への移行は、多くの企業にとって大きな変革となります。本記事で解説したように、この基準の適用は単なる会計処理の変更にとどまらず、契約管理、システム対応、税務・監査対応など多岐にわたる準備が必要です。

適用までの準備期間を有効に活用し、以下のポイントを押さえた計画的な取り組みが重要です:

1. 全社的なプロジェクト体制の構築と経営層の関与
2. リース契約の網羅的な棚卸しと分類
3. 適切なシステム対応による効率化
4. 監査法人との早期からの連携
5. 財務指標への影響分析と対外的な説明準備

株式会社プロシップをはじめとする専門企業のサポートを活用しながら、新リース会計基準への移行を成功させることで、財務報告の透明性向上という本来の目的を達成するとともに、契約管理の効率化やガバナンス強化といった副次的なメリットも享受できるでしょう。

早期の取り組み開始こそが、この大きな変革を乗り切るための最も重要な第一歩となります。

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